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Dr.タコの外来小咄 (275号)

かつて受験生だった自分も、今では入学試験で面接して合否を判定する立場になっています。父親を批判していたら、今では子供に議論ふっかけられる始末。でもこうやって物事の表と裏?を体験して初めて「あざなえる縄のごとく」なにかが完結していく感もあり、良くできた物語です。

おかしな算数

食堂で見かけた一コマ、定食を食べている男性がみそ汁半分飲んだところで厨房に注文しています
「おれさあ血圧高いから濃いのダメなんだよね、これにお湯足して薄めてくんねえカナ?」
「はい、わかりました」
薄めても全部飲んだら塩分量は同じでしょ!
またある方は
「食欲ないというので缶の栄養剤試してもらいましたけど、どうでしたか?」
「ええ、すごくおいしく飲めました」
「それはよかった、じゃあ続けましょう」
「あのう、あれは大丈夫でしょうか?」「というと」
「コレステロールとか高いかなと」
「食べられなくて体重減ったの心配してる人が、コレステロール気にしてる場合ですか?そんなだから食べられなくなるんですよ、きっと!」

マゴマゴしていると

「今回検査結果は少し悪化していますね、薬はきちんと飲んでいましたか?」
「いえね、正月でマゴ達が来て忙しかったから、きちんと飲めなくて・・・」
「と言っても薬飲むヒマないとは思えませんけど」
「バタバタして大変なんです」
「まあ、わかりますけどね。ただ、マゴさんと元気に暮らすためにも、しっかりしないと」
「そうですね、気をつけます!」
息子達も子どもをジージバーバに丸投げしないようにね

伝言ゲームの危険

「先生に、あなたは癌だって言われたって、おばあちゃんから電話があって」
「えっ!」
「でもなんだか変だなと思って、確かめに電話しました」
「そうですか、癌だなんて言ってません、誤解です」
「まあ、よかった」
「胃にポリープがあって毎年検査してますが、中にはガン化する人もいるから胃カメラで取ることもできますよ、と教えたんです」
「じゃあ大丈夫なんですね」
「現時点で悪性の所見はありませんが、全く否定はできないのでお話しするんです」
「でも、心配ないんですね」
「正確に伝わらないのがわかりましたから、おばあちゃんと一緒にお話を聞きに来てください。正確に伝わるとは、残念ながら思えないので」
医者が専門用語で説明すると「なんだか難しくてよくわからん」になりがち、ずばっと断言した方が良いんでしょうね

誰がぼけるのか

「ボケるのだけはイヤだね、迷惑かけるし、恥ずかしいし、情けないよね」
「でもよく考えると、ボケちゃったら、恥ずかしいと感じる自我はある意味壊れてなくなってるかもしれない」
「そうかなあ」
「であれば意識はしっかりしていながら、脳梗塞で体がきかないのも、かなりしんどいんじゃないですか」
「そりゃあそうだ。じゃあボケた者勝ちってわけ?」
「おだやかに老いを受け入れていくためのうまい仕組みなのかもしれません」
でも自我がなくなるとしたら、それはいったい‘誰’なんでしょうね?

転載:月刊東洋療法 275号
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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