トップ > お知らせ一覧 >「医者いらず健康長寿処方箋」(43)

医者いらず健康長寿処方箋(43)

健康科学研究所所長・大阪市立大学医学部名誉教授 井上正康


井上正康先生は、癌や生活習慣病を「活性酸素」やエネルギー代謝の観点と、地球や生命の歴史という大きな視野で研究されている国際的研究者です。現在、多くの府県師会主催の公開講座で講演され大好評を博しています。ぜひ貴師会でも!
 ご連絡は下記URLより。
健康科学研究所HP http://www.inouemasayasu.com/seminar/

「高血圧医療の不都合な真実」

 血圧は脳が必要とする酸素や栄養素を適切に供給する為の血流量を確保する様に制御されている。年齢と共に動脈硬化が進むので、これに応じて血圧を上げていかなければ脳が栄養エネルギー不足に陥り神経細胞の機能を維持できなくなる。私の学生時代には“正常な血圧は年齢+90 mmHg”と教えられていた。本来、高齢者の血圧を下げすぎると脳に悪影響が出る事から、我が国のガイドラインでも降圧目標としては70歳代で160/90 mmHg程度、80歳代では170/90 mmHg程度を目安にするのが良いとされていた。
 これに対して日本高血圧学会では欧米のガイドラインを盲信して、いつの間にか“年齢に関係なく高齢者も健康な中壮年と同じ140/90 mmHgに維持すべきである”と基準値を変えてしまった。この為、1990年代には230万人であった高血圧患者は一夜にして1600万人に跳ね上がり、2008年には130 mmHgに引き下げられて患者数が一気に3700万人と倍増した。2011年には“可能な限り120/85 mmHgに近づける様に”と指導した結果、日本の降圧剤服用患者は5500万人にまで膨れ上がった。日本の人口は1億3000万人であり、50歳以上は7150万人(55%)、60歳以上は4000万人(33%)、65歳以上は3460万人(27%)なので、日本の高齢者の大半が高血圧患者であることになる。
 現在、世界の人口は73億人であり、日本人はその1.8%である。驚くべき事に、この僅かな人口が世界の全医薬品の40%を消費しており、降圧剤に至っては60%も服用しているのである。日本人一人当たりの医薬使用量はダントツ世界一である。“世界最長寿民族である日本の高齢者の大半が高血圧薬を服用している”と云う異常事態が常態化しているのである。“高血圧は致死的結果を招くサイレントキラーなので自覚症状が無くても早期から生涯に渡り降圧剤を服用すべき”との脅し文句が国民の不安を煽り、不必要な投薬が行われている。日本の高齢者の大半が元気に日常生活を送っている事を考えると、高血圧学会や循環器専門医達の基準が如何に非常識なものかが伺われる。この異常事態の背景には製薬企業主導型の医学会や専門家集団の利権が関与している。製薬企業や医療界にとって、病気の判定基準を少し厳しくすれば簡単に患者数を増やして収益を上げることが可能であり、日本で使われている降圧剤の総額は1兆円を遥かに超える市場規模になっている。
 学問の進歩は人々の生活を豊かにしてくれる事が多いが、科学として最も未熟な医学では社会的要因や魑魅魍魎の欲望が介入しやすく、時として進歩とは無縁な珍現象が起こる事も少なくない。製薬企業の寄付金で支えられている多くの大学研究や臨床学会ではしばしば利益相反現象が生じうる。その代表的な例が某製薬企業と大学研究者を巻き込んだ降圧剤に関する論文捏造や薬剤承認に関する事件である。大半の真面目な医師にとっては学会の治療ガイドラインに忠実に従う事が誠実な医療行為である為、循環器内科を受信した多くの高齢者が血圧を不必要に下げられてフラツキや立ち眩みを起こして元気をなくすトラブルが頻発している。世界最長寿民族の日本では晩年に寝たきりになる患者が少なくない理由の一つに降圧薬などの過剰投与が関与している可能性がある。動脈硬化を予防軽減する事こそが高血圧医療の基本的課題であり、年齢に応じて血圧の正常値を少しづつ高くしていく発想は今日でも個々人の[血圧という個性]を考慮した優れた考え方なのである。
 動脈硬化の予防に関しては鍼灸マッサージ師の方々にも好評の[もむだけで血管は若返る(PHP研究所)]をご参照下さい。

転載:月刊東洋療法280号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

PAGETOP