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医者いらず健康長寿処方箋(79)

健康科学研究所所長・大阪市立大学医学部名誉教授 井上正康


 井上正康先生は、癌や生活習慣病を「活性酸素」やエネルギー代謝の観点と、地球や生命の歴史という大きな視野で研究されている国際的研究者です。現在、多くの府県師会主催の公開講座で講演され大好評を博しています。ぜひ貴師会でも!
ご連絡はURLより。 http://www.inouemasayasu.net

「日本コロナの真実とPCR/ワクチン幻想」

 ヒトは様々な病原体と戦いながら彼らを利用して平和共存する戦略を進化させてきた。事実、ヒトゲノムの約8%はウイルス由来である。ウイルスとの戦いは免疫が主役であり、自然免疫、細胞性免疫、液性免疫などの免疫軍隊が役割分担している。ペストが頻繁に流行したヨーロッパではペスト菌に耐性の免疫遺伝子が集団内に広がってきた。この様な遺伝免疫的特性はヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれており、コロナウイルスとの戦いでも重要である。コロナウイルスに感染して抗体が産生されても、その血中濃度は数週間(IgM)~数ヶ月(IgG)で低下していく。しかし、ウイルスに対する免疫記憶を獲得したリンパ球は体内に長期間留まり、次の感染に備えて臨戦体制を維持している。事実、中国の新型コロナ感染者の97%で数ヶ月後には血中抗体が低下しており、スウェーデンでは免疫記憶を有するTリンパ球が確認されている。オーストラリアの新型コロナ感染者でも約85%で弱毒株と強毒株に対する抗体が産生されており、構造が類似したコロナウイルス仲間に対する抵抗性を交差免疫反応が起る事が判明している。日本には古くから土着のコロナウイルスが住み着いており、子供の頃から何度も罹ってきた風邪の約30%は彼らが原因である。強毒のコロナによるSARSにより中国や韓国で約8,000人も死亡した際に、日本では一人の死者も認められなかった。この事実は日本人がコロナウイルス仲間に対する抵抗性を有する事を示唆する。今回の新型コロナでも日本の若者や成人の大半が無症状~軽症であったのは交差免疫反応のお蔭であった。しかし、新型強毒株はスパイク蛋白が変異して感染力が約6倍強くなり、免疫力が低下した高齢者および癌や生活習慣病の患者では重症化して亡くなるケースが多いので注意を要する。これは土着のコロナによる風邪でも同様であり、“風邪が万病の源”と言われる所以でもある。
 今回、海外からは「オリンピックの為にPCR検査を抑えて感染者数を少なく見せているのではないか?」などと疑われ、これに煽られたメディアや評論家が「他国より検査数が少ないのは日本の恥だ!」とか「全国民をPCR検査すべきだ!」とヒステリックな主張を続けている。PCR検査は遺伝子断片を高感度で検出する方法であり、鋳型RNAの選択や測定条件により感度や特異度が大きく影響され、僅かな汚染でも偽陽性になる。米国CDCの注意事項には「PCR検査は遺伝子断片の検出法であり、ウイルスの感染力とは直接関係ない」と明記されている(https://www.fda.gov/media/134922/download)。使用説明書にも“このキットは類似のウイルス断片でも陽性になるので新型コロナの診断には注意が必要”と記載されている。この為に健康な全国民をPCR検査すれば無数の偽陽性や偽陰性が生じて検査した意味がなくなり、莫大な時間と労力とコストが無駄になる。PCR検査は潜伏期の短いインフルエンザや重症のSARSやMERSなどでは有効であるが、潜伏期が比較的長い新型コロナでは効果も限定的である。東京アラートを解除後にPCR検査数を大幅に増やして新宿の夜の街を調べた結果、連日3桁台の陽性者が続出し、“感染爆発が起こる!”とマスコミや評論家が騒いでいる。検査数を増やせば陽性数も増加するのは当たり前であり、陽性数と検査数の比率を見れば感染爆発でない事が判る。夏でもお腹を冷やせば“夏風邪“を引くことはよく知られており、風邪のウイルスは身辺に潜んでいる。東京都の“PCR陽性”は変異した様々なコロナ仲間の存在を反映しており、検査数を増やせば全国で同様の陽性増加が見つかる可能性が高い。しかも、PCR陽性者の大半は無症状の若者であり、免疫系が活性化されると再感染や他者に感染させるリスクは激減する。夏の間に“無症状のPCR陽性者”が激増すれば年末~冬期に予想される“次の波”によるリスクも軽減するであろう。政府は“陽性数増加”の正確な内容を国民に開示して不安を軽減すべきである。
 “不確かな感染者数”で恐怖心が煽られ、“ワクチンが開発されれば大丈夫!”とワクチンへの期待が高まっている。現在、新型コロナに対するワクチンが世界中で150種類以上開発中であり、約15種類が臨床治験中である。しかし、これらが安全に使える様になるまでにはかなり時間が必要である。ウイルスに対する中和抗体は予防治療に有用であるが、突然変異速度が速い場合は逆に抗体が感染を増悪させる事もある。この “抗体依存性感染増強(ADE)”と呼ばれる現象は、SARSのワクチン開発が17年間凍結されている理由であり、エイズ、C型肝炎、デング熱などでもワクチン開発の障壁となっている。何億人もの健康人に接種するワクチンはADEの問題を解決しなければ安心して使えない。緊急時こそ丁寧かつ慎重に対応することが大切である。コロナウイルスに対する交差免疫力を持つ大半の日本人は、ワクチンに過剰な期待をせずに冷静に対応すべきである。大半の日本人には新型コロナも少し感染力の強い風邪ウイルスであり、高齢者や生活習慣病などの免疫弱者を集中的にケアすることにより生命と経済活動を有効に守ることが可能である。現在、日本や世界で誕生しつつある新型変異株も含む“次の波”に対して過剰反応することなく、彼等との俯瞰的な共存路線を模索する事が日本政府や医学研究者の重要な課題である。

転載:月刊東洋療法316号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

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