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医者いらず健康長寿処方箋(85)

健康科学研究所所長・大阪市立大学医学部名誉教授 井上正康


 井上正康先生は、癌や生活習慣病を「活性酸素」やエネルギー代謝の観点と、地球や生命の歴史という大きな視野で研究されている国際的研究者です。現在、多くの府県師会主催の公開講座で講演され大好評を博しています。ぜひ貴師会でも!
ご連絡はURLより。 http://www.inouemasayasu.net

「緊急事態再宣言と失敗の本日」

 新型コロナがパンデミックとなって1年が経過し、世界の様相は一変してしまった。米国では大統領選挙を通じて国民の深刻な分断が表面化し、日本でもメディアに煽られた恐怖心が過剰反応を誘発し、自粛の強要が文化活動や経済活動を窒息死させつつある。小池都知事らのポピュリズムに押し切られた菅首相は、“罰則と給付金をセットにした飲食店の営業時短や休業要請の実効性を確保する為に特別措置法の改正が必要”と述べた。感染症対策分科会の尾身委員長は“感染経路の多くは不明だが、飲食店の可能性が高く、時短要請には一定の効果がある”と感想を述べて政府に時短政策を進言した。実は、感染リスクが最も高い現場は病院や医療福祉施設である事が判明しており、これに続く2~4位は教育施設、飲食関係、職場関係であるが大同小異である。この様な事実を無視した思い付きで飲食業界をスケープゴートにし、時短要請や休業要請に従わない場合は店名を公表すると恫喝する事は言語道断の暴政である。自粛警察のヒステリー反応が暴走するSNS時代に店名を公表すれば、無数の誹謗中傷で実害が深刻化して最悪の人権侵害になりうる。切り取った数字を一人歩きさせて印象操作すれば、どの様なストーリーでも捏造可能である。日本の年間死者数約138万人(3,770人/日)に較べ、既往歴のある高リスク者のコロナ死は11人/日であり、他の疾患に較べても圧倒的に少ない。コロナ禍による経済的破綻で失業者や困窮弱者が激増し、特に若い女性や子供の自殺も増加して例年の総数を上回っている。“PCR陽性者”の激増に対する恐怖感が国民のバランス感覚を失わせ、過剰反応による人災被害を深刻化させている。実は、PCR陽性者=感染者と誤解した初歩的ミスとその誤用が国の感染症対策を迷走させた主要な原因である。この事実は海外やWHOでも認識されており、人災被害をこれ以上悪化させない為にPCRの適正使用が急務となっている。
 新型コロナのPCR検査は約3万個の塩基からなるRNA遺伝子の0.3%程度を鋳型にして2、4、8倍、、、と増幅してRNAのカケラを超高感度で検出する方法である。この方法は実験室で用いると大変有力な武器となるが、鋳型の選択、測定条件、増幅サイクル数(Ct値)などを厳密に考慮する必要があり、突然変異の多いRNAウイルスの臨床診断には適さない。特に、Ct値が高くなると感染力や毒性と無関係な新型コロナの残骸、土着コロナやその残骸などで“偽陽性者”を激増させうる。新型コロナでは既に6,000種以上の変異株が報告されており、高過ぎるCt値では何を検出しているかが不明となる。実は、SARS-COV2のPCR検査法として報告された金字塔的なCorman-Drosten論文ではPCRキット販売会社の社員や掲載誌の編集委員が著者になっており、Ct値の不記載、査読の不明瞭さ、利益相反など様々な不備がある。この為にドイツの著名な遺伝学者Borger博士をはじめとする20名の専門家が“論文の即時撤回を要求する公開書簡”を提出している。この様な背景を尻目に日本では、“コロナの女王”と呼ばれる大学教授や東大名誉教授などが“PCR検査の数を増やせ!”と連呼し、昨夏には民間のPCR検査数が激増して“第二波と呼ばれるPCR陽性者の山”が形成された。しかし、その大半は無症状の健常者であり、重症化したり死亡した例は極めて少ない。PCR陽性=感染者と誤解した初歩的ミスは、小さな土器のカケラを見つけて“無傷の縄文土器を発見した!”と大騒ぎしているのに等しい。土器のカケラと無傷の火焔土器とは似て非なるものであり、高過ぎるCt値の場合は大半が素性不明の残骸である。通常、ウイルス感染には1万個以上(Ct値31で検出可能)の感染力を持つウイルスが必要であり、実験室内でも安全性を考慮してCt値35(350億倍の増幅で500コピーを検出可能)以下で運用されている。新型コロナ検査のCt値は国毎に異なり、スウェーデン、台湾、中国などでは30~34と適正範囲であるが、ウイルスの実害が大きかった英仏では40~45で運用されている。一方、新型コロナの実害が少ない日本 の国立感染症研究所では偽陽性者が激増するCt値~45(35兆倍増幅で1個のカケラで陽性)で運用されており、これに対して多くの専門家が疑義を述べている。日本感染症学会やWHOもPCR検査はCt値34以下で運用すべきであると警告している。事実、感染に必要なウイルス量はCt値34以下で十分検出可能であり、それ以上では大半が偽陽性でウイルスが分離できない事も判明している。
 今回のコロナ騒動を暴走させたもう一つの原因が“指定感染症2類”である。これはエボラ出血熱やSARSなどの猛毒で高致死率の病原体に適用される基準であり、目前に無数の死体が横たわる様な状況に対応するものである。感染者を厳重隔離する必要がある指定感染症2類は、PCR陽性者や軽症患者をホテルや自宅で待機させている新型コロナとは次元が異なる。新型コロナを未だに“2類”に分類している為に、問題のない無症状のPCR陽性者にも過剰対応して医療崩壊を誘発させかけている。この為に看護師や医師の不足を補う為に自衛隊医務官の派遣を依頼する騒動にまで発展した。この様な対応は戦時で死傷者が激増する有事にのみ行われるものである。
 COVID-19が新興感染症であった昨年末までは多少の過剰反応も医学的に許容されうる事である。しかし、この1年間にウイルスの分子特性、感染病態、免疫特性などが詳しく解析され、新型コロナも今では相当部分が既知のウイルスになった。未だに新型ウイルスとして過剰反応で2類に指定放置している事は行政の不勉強と許されない不作為である。“指定感染症2類とPCR検査”が二人三脚で国民の恐怖心を煽り続けて自ら首を締め続けている。日本政府の緊急課題は“PCR検査をCt値34以下で適正運用して偽陽性率を抑制し、2類指定を5類相当以下に格下げする事”である。政府は世論や支持率低下を恐れてポピュリズムに走らず、“先の大戦で空気に支配されて多くの国民を死なせた『失敗の本質』を肝に銘じ、政治家生命を賭けて国民の生活を守る事”を緊急のミッションとすべきである。

転載:月刊東洋療法322号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

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