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Dr.タコのお気軽クリニック 尿潜血 332号

自治体や職場の健診は通年で出来るように思うのですが、なぜか秋に集中します。皆様健診やドックの結果をそのまま持ってこられます。大事なのは異常を指摘されてからの対策なのですが、健診を受けて安心してしまう方が多いので、油断しないでくださいね。そこで今回のテーマは「尿潜血」です。

 健診を受けた後で「尿潜血陽性、再検または精査してください」という通知をもらった方もいらっしゃるかもしれません。尿に糖が出れば糖尿病か、とわかりやすいのですが、潜血は意外と見過ごされていることが多いようです(糖と蛋白のみの検査がほとんどですけど)
 尿潜血とはなんなのでしょう。尿に血が混じる状態は大きく肉眼的血尿(尿が赤く見える)と顕微鏡的血尿(試験紙や顕微鏡でわかる)にわけられます。これは程度の違いです。後者は尿潜血といい濃さによって±~3+と表します。0.1%つまり1リットルの尿に1cc以上の血液が混ざれば目に見えるようになります。よほどでなければ貧血になる量ではありません。
 まれに溶血(血液が壊れて排出される)やミオグロビン尿(筋肉がたくさん壊れて出る、激しい肉体労働後など)でも陽性に出ます。これらは血液検査や、顕微鏡で尿(沈渣)を再検すれば区別できます。逆にビタミンCを飲んでいると血が出ていても試験紙で陰性に出る(検査で引っ掛からない)ことがあります。
 腎臓から膀胱を経て尿道まで、尿の通り道のどこかで血が出ている可能性があるということです。まれに全身的な原因で血が出やすい状態(出血傾向)もありますが、比較的多いのは炎症(細菌などの感染)によるもので、膀胱炎・前立腺炎・尿道炎・腎盂腎炎(腎結核)などです。これらは尿が近い、あるいは出にくい、排尿後の痛み、尿が濁る、腰背部の痛み、発熱などの症状を伴うことが多いので診断しやすいです。
 どこかに結石がある場合も傷を付けて血が出ます。場所によって腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石になりますが、部位によっては必ずしも痛みを伴わない場合もあります。嚢胞腎や遊走腎(姿勢で腎臓が大きく移動する)が見つかることもあります。
 急性・慢性腎炎やIgA腎症などという内科的な病気での潜血は、蛋白尿を伴うことが多く、沢山の病名がありますが、要は徐々に腎機能が悪化するものを見逃さないことです。そのため血液検査のほか、腎生検(組織検査)が必要になることもあります。
 中年以降で注意が必要なのはやはり悪性疾患です。腎臓癌・膀胱癌・前立腺癌・尿管癌など。頻度はそれほど高くはありませんが、見逃すわけにはいきません。自覚症状を伴わない(無症候性血尿)ことも多く、鑑別診断のためには尿細胞診、腎盂造影、エコー、CT、膀胱鏡、腫瘍マーカー(前立腺癌のPSA)などの検査があります。
 ただしすべての人にこれらを行う必要はなく、症状・尿所見・年齢などで絞り込みます。内科を経て泌尿器科に紹介される場合が多いようです。高齢の女性では婦人科の病気から尿に混入することもあります。
 問題ない場合が多い尿潜血ですがこのように隠された悪性疾患を見逃さないように、健診を続けることと、一度は精査することが「せんけつ(先決)」です。

転載:月刊東洋療法 332号
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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