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Dr.タコのお気軽クリニック 餅がつまったら 333号

あけましておめでとうございます。コロナのせいか月日の経つのが早く感じられます。かつてK崎の救急病院で対応していたタコも、開業医としては救命救急の現場に居合わせることも少なくなりました。しかし田舎でも心筋梗塞や窒息で急変する人は同じにいます。医者としての初診を忘るべからず、というお話。

 おめでたいはずの正月ですが、毎年決まってもちを詰まらせて窒息というニュースが流れます。過去にはパンの早食い競争で窒息死した学生の事故もありました。せっかくの楽しい時期が悲惨な結果になるのは避けたいもの。対処法を知っているだけで結果が変えられるかもしれません。
 もちは粘り気が強く、大きな塊のまま飲み込むと気道の入り口を塞ぎやすく、お年寄りや、病気や麻痺のため飲み下す機能や吐き出す力が弱い人は注意が必要です。窒息には高齢の他に、歯の欠損や飲酒の影響が大きいとされ、鎮静剤の内服も危険因子として挙げられています。
 もちろん予防が大切ですし、可能です。気をつけることは「もちはご飯をはしで食べる時の1・2口程度に小さく切る」「あらかじめお茶や汁などでのどを湿らせる」「ゆっくりとかむ」「一人の時や酔ったときは食べない」「もちを口の中に入れたままで話をしない、周囲も話しかけないようにする」などです。
 窒息の最初の症状はせきこみが多いのですが、激しくせきこむと助けを呼べなくなります。窒息のサインはさまざまです。のどのあたりを両手でかきむしるような動作は世界共通だそうですが、呼吸や話す力が徐々に弱くなり止まる、甲高い音やいびきのような音を出す、顔が真っ青になったり、けいれん発作を起こしたり、意識がなくなることもあります。これらに早く気づいてください。
 いざという時は、家族でも隣家でも応援を求め、できるだけ早く救急車を呼び、到着するまでは応急処置を施しましょう。窒息による呼吸停止から4分経つと蘇生の確率は50%に、5分で25%にまで減ってしまうのです。厳しいお話ですが、ご家族の初期対応が予後を左右する可能性があります。
 応急処置とは、①もちを詰まらせた人の口の中をのぞく。もちが見えたら、指にガーゼなどを巻き、円を描くようにして拭き取る。この時もちを奥に押し込まないようにすることが大切です。
 ②もちが見えない場合、うつむかせて、両肩の肩甲骨の間を平手で力強く4~5回たたく(背部叩打法)。その後口の中を確認し、もちが見えたら指で取る。一人がけのいすの上に腹ばいにさせて、たたくのも良いでしょう。もちを詰まらせた人が倒れている時は、横向きにさせて、片方の手で背中をたたいて、同様に指で取り除きます。
 ③ハイムリック法:上記の方法でだめな時に考慮します。上腹部と胸を圧迫して、のどに詰まったものを吐き出させる方法です。後ろから上半身を抱くようにして、右こぶしをみぞおちにあて左手を添え、力強く手前に引き上げ、上腹部を圧迫します。詰まったものが出るまで、強く引き締めて4回ほど圧迫を繰り返します(ネットで動画を見られます)。ただし、強すぎると内臓破裂の恐れがあり、小児の場合は力を弱めます(乳児や妊婦には行いません)。この方法は、意識を失ったらすぐにやめます。
 このほか、掃除機の吸い込み口に細いノズルをつけ、口の中に入れて吸うという方法もありますが、時間もかかり安全が確立されていないので、救急隊と相談しつつ対処してください。
 体外式除細動器(AED)が普及して蘇生術の講義を受ける方も増えているようですが、もちによる窒息は簡単な方法で命を救う可能性があり、ぜひ心にとめておいて頂きたいと思います。みなさま安心で穏やかな正月をお過ごしください。

転載:月刊東洋療法 333号
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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