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Dr.タコのお気軽クリニック 「肥満はなぜいけないの?」 335号

コロナ太りや自粛太りと言った言葉はもはや定着した感があり、また正月太りとも言い、冬の間はどうしても体重が増える方が多いようです。積もった雪と一緒に、脂肪も春に溶けてくれればいいのにと思っている方は多いのかもしれません。で、ダイエットです。

 肥満は今や全世界的な傾向であり大きな課題です。人体はもともと飢えに対して強かったため、食べ物が入ったときはとりあえず余分をため込むという対応をします。そこに現代の機械化文明・車社会による身体活動量の減少や、飽食が起これば肥満は避けられない。
 近くのコンビニへも自動車で移動し、テレビやパソコンを前に長時間座っている生活。さらには掃除機や洗濯機による家事の省エネといった生活の消費エネルギー量の減少という背景があります。
 一方で安くて口当たりのいい食物が常に大量に入手可能となり、食事回数や一回の摂取カロリーが増えました。脂肪由来のエネルギーの比率が増加したことも肥満の増加に関係しています。その意味で現代人はみな太りやすい状況にあると言えます。
 そもそも肥満はなぜいけないのか。肥満の健康障害はすぐには姿を現しません。小児や若年成人での肥満の爆発的増加は、今後、糖尿病、高血圧症、虚血性心疾患、胆石、閉経後の乳ガン、変形性膝関節症、腰痛の発生の増加となって現れ、医療費以外にも直接・間接的なコストは莫大になると予想されています。
 基本的には肥満はカロリーの過剰摂取と運動不足が原因です。ただ「肥満者はやせた人よりも平均してむしろ食べる量は少ない」というデータや、更年期以降の女性は内分泌の変化を受けて「少し食べてもすぐ太る体質」になりやすい。また男性の中年太りといわれる内臓肥満の鍵を握っているのはアルコールです。
 脂肪といえば皮下脂肪が知られていますが、じつは腸や肝臓などの周囲にもたまる内臓脂肪があり、同じ脂肪でも全身への影響が異なります。内臓脂肪が過度にたまると、おなかがぷっくりと出てくるいわゆる「中年太り」となり、生活習慣病にかかりやすいのはこのタイプ。少量でも毎日の飲酒習慣は脂肪の燃焼を妨げ、いわゆるビール腹の原因になるといわれます。また見た目は痩せて見えるのに体脂肪率が高い「隠れ肥満」はダイエットを繰り返している女性によく見られます。
 肥満、耐糖能異常、高中性脂肪血症、高血圧がそろうと「死の四重奏」といわれ、心筋梗塞などの冠動脈疾患を引き起こしやすいのです。軽症でも肥満・高血圧・高血糖・高中性脂肪または脂質異常症のうち2つ持つ人は、全く持たない人に比べ心臓病の発症リスクが10倍近くに、3~4つ併せ持つ人はなんと31倍にもなることがわかっています。見た目の問題ではなく内臓脂肪型肥満は生活習慣病の危険因子なのです。
 太りやすさは基礎代謝(安静に寝た状態で、睡眠することなく24時間で消費するエネルギー量のこと:心臓、体温の維持などに筋肉や臓器が活動するため消費するエネルギー)を測定すれば推測でき、基礎代謝が低いほど太りやすいのです。基礎代謝を増やすコツはエネルギー消費の大きい筋肉を増やすことです。つまり筋トレによって太りにくい体質になることは可能なのです。
 運動は筋肉の血流を増やし、インスリン抵抗性(膵臓からインスリンが血中に分泌されているにもかかわらず、標的臓器〔骨格筋・脂肪組織・肝臓〕のインスリンに対する感受性が低下し、その作用が鈍くなっている状態、糖尿病の原因の一つ)も改善します。カロリーの消費だけでなく、ストレス発散効果も期待できます。週に4日は休肝日、車を使わずに歩きましょう!コロナ禍でも、屋内でのスクワットや屋外の一人での散歩は出来るはず。酒と脂と油(ガソリン)を減らし笑顔を増やして生のシンフォニーを奏でようではありませんか!

転載:月刊東洋療法 335号
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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