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Dr.タコのお気軽クリニック 「性差医療」 338号

世界的にも時流としても男女平等という価値観が大事にされています。なにを今更と言われそうですが、医学的に男女の身体が違うのは勿論ですが、実は病気のなりやすさには男女差があります。医療現場では男女を同じに捉えていては逆に不公平になりかねないというのが「性差医療」という考え方です。

 男性のデータのみにより、女性をそれに当てはめて医療を行うのはおかしい、女性は男性とは違う、ということが米国で警告・提唱され、性差の違いを明確にした上で、しっかりした研究データに基づく医療が必要である、というのが性差医療の考え方です。米国では1980年代には始まっていましたが、我が国での取り組みは10年余り遅れました。
 診断基準・検査の正常値や治療が男女同じでよいのかという検討がなされ、男女の生物学的差、それぞれに特有の疾患や病態などのほか、社会的な立場と健康の関連に関する研究を進め、その結果を診断・治療・予防へ反映することを目的とした医療改革のことなのです。
 米国では男女とも死亡原因の第1位は心血管疾患ですが、1985年にこの死亡数で女性が男性を超えました。男性の心血管疾患は着実に減少しているのに、女性は減少が認められないことが問題になり、それまでの男性対象の研究結果に基づく治療・予防法が必ずしも女性には当てはまらないのではという疑問を提起したのです。
 最近は女性専門外来のように医療の現場でも着目され拡大しています。差異を認識して異なった対応をすることが医学的には平等なのです。
 全世界的には女性のほうが男性よりも長生きです。ただ心筋梗塞、脳卒中、高血圧、肺癌など男性に多い病気がある一方で、女性は男性よりも少ない飲酒量で肝硬変になりやすい、骨粗鬆症が多い、うつ病になりやすい、などの差があります。
 性ホルモンの影響が大きいと考えられますが、わからない部分も多いのです。男性に高血圧が多い理由としては、肥満者・喫煙率・飲酒量が多い、治療率が低いなどが挙げられます。
 さらに脳の働きにも性差があることがわかっています。脳の色々の部位で神経核の構造や大きさが男女で異なる部位があり、行動や感じ方、生活パターンまで決めているという説もあります。かつて『話を聞かない男、地図が読めない女』という本はそのあたりをユーモラスに報告してベストセラーになりました。
 昨今世界を騒がせているロシアでは、男性の平均寿命が女性より12歳も短く、その理由として「男性は自分の健康管理に熱心でない」という分析があります(ウォッカの飲み過ぎもあると思いますけど)。日本で健診を受けるのも圧倒的に女性が多いことや、真面目に(?)通院を継続されるのも女性が多いことからも、これは我が国にも当てはまりそうです。
 多忙なほかに、生活習慣をあらためてという指導を、人格を批判・非難されるように感じ避ける男性が多いのかもしれず、そんな行動パターンも男性の特徴とすれば、状況が逆転することはないかもしれません。
 日本人の心筋梗塞の危険因子を調べた報告では、欧米では喫煙と高脂血症や肥満が大きな危険因子でしたが、日本では高血圧が最も危険度が高く、ついで糖尿病、喫煙、家族歴でした。国によって危険度が違うことも興味深いですが、注目すべきは、女性ではこの順位が変わり、喫煙が非常に強力な危険因子で、ついで糖尿病、高血圧、家族歴の順だったのです。
 女性ホルモンは動脈硬化に対して防御的な作用があることが知られ、閉経後に高血圧や脂質異常症が増加し、動脈硬化の進行は早まります。また喫煙は閉経を約2年早めるとも言われます。同じ喫煙量でも女性は男性の2倍肺ガンになりやすいというデータもあり、女性は喫煙による悪影響を受けやすいのです。
 女性が仕事に関わる機会が増え、ストレスや生活習慣病の増加も懸念されます。実際、男性に比べて若年女性の喫煙率は減少していません。機会や評価の男女平等の流れとともに、性差医療も今後さらに注目され、本当の意味での男女相互理解、協調がすすむことを期待したいと思います。

転載:月刊東洋療法 338号
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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