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Dr.タコのお気軽クリニック 「熱中症の落とし穴」340号

短い梅雨が明けると、全国で猛暑日が続く厳しい夏となっています。コロナ禍で外出の機会は減っていますが急激な変化に身体が追いつかず、屋内での熱中症も多く、受診や救急搬送、さらには亡くなる方まで増えています。そこで実際の症例を通じて気になったことをまとめてみました。

「体育館で部活の練習をしていた、1週間後水を飲んでも吐くようになった」

 猛暑時は原則運動禁止ですが、野外では危険と思っても、体育館なら大丈夫と思われているのかもしれません。確かに発生は野球が最も多く他にラグビー・サッカーなど、屋内では柔道・剣道などに多く、男性が多数で肥満者が7割を占めるとされますが、この場合はフェンシング部の女子でした。
 屋内は風がないぶん温度が高いうえに湿度も高く、激しい運動や道着やウェアを着ての運動など、危険な場合があります。スポーツでは体内で大量の熱が発生するため、それほど高くない気温や、30分程度の短時間でも熱中症が発生するのです。
 激しい運動では安静時の10から15倍の熱が発生し、熱放散が制限された状況(マスク・防具装着や外気温が体温を上回るなど)では容易にうつ熱(体に熱がこもる)が生じる可能性があり、これは風邪の発熱よりもある意味危険な状態です。
 運動前後の体重を測定すると、水分補給が適切であるかが分かります。体重の3%以上の水分が失われると体温調節に影響すると言われており、これが2%以内に収まるように水分補給を行うのが良いでしょう。体重の比較は小さい子供やお年寄りにも有効で、脱水の評価の参考になります。
 暑い中ではトレーニングの質が低下して効果も上がらず、しかも消耗が激しいので、無理せず中止する判断をして下さい。

「クーラーを嫌がってつけていなかった祖父、だんだん元気がなくなり食べなくなった」

  特に高齢者に多いのですが、クーラーがない、あってもつけてないという人も多いです。かといって熱に強いわけでもなく、暑さや脱水を感じにくいため悪化に気づくのが遅れがちです。熱帯夜も数日続くと徐々に体力が奪われるので注意が必要です。
 最近元気がない・食べなくなった・寝てばかりいると言って、娘さんが外来につれてこられた高齢の女性は重度の脱水と腎不全で、1週間以上点滴してなんとか回復しました。冷房がないという方には裏技として公共施設やスーパーに行って少しでも涼をとって下さい、と言います。
 症状としてのどが乾くのはもちろんですが、意識がぼーっとする、吐き気がする、頭痛がする、おしっこの量が減った、汗が出ず肌が乾いている、舌が乾燥しているなどは危険な兆候です。脱水で血液が濃縮され血流が悪化するため、冬期に次いで真夏も脳梗塞は多いので注意が必要です。
 ご家族もべろや皮膚の状態を観察したり、体重を比較したりすることで脱水状態を判断できます。早めに対応すれば軽症で済むことも多いのです。熱中症は病気というよりは事故の意味合いもあり、避けることが可能なのです。

「自分は若くて鍛えてるし健康だから炎天下で野外作業をしても大丈夫、と思っていたら足がつって動けなくなった」

 熱中症とは縁がないと言い切る人もいますが、決してそんなことはありません。猛暑日にも関わらず、ジョギング・テニスや山登りをしている方はこのタイプが多いようです。逆に過信しているため、無理をして熱中症になり救急外来を受診する人もいます。
 炎天下で草取りなどをしないようにと注意しますが、皆さんやめられないようです。私の口癖ですが「草取り、キノコ採り、山菜採り、タケノコ採り、それがイノチ取りですよ!」帽子を被る、首に水で濡らしたタオルを巻く、休憩をとる、朝夕の日差しの弱い時間帯に行う、などの対策が必要です。
 ただし塗装業や建築、道路工事など野外作業を強いられる場合もあります。具合が悪くなった場合は早めに受診して点滴などをするようにしてください。最新式の送風機付きの作業着も良いでしょう。現場監督の方は状況に応じて休みを取るように指導をお願いします。
 発熱だけでは熱中症と新型コロナ感染を区別できない場合もあり、解熱剤をのんで済ませるのではなく、しっかり評価して対応する必要があります。私は「太陽コロナと新型コロナ、二つのコロナ禍」と呼んでいます。
 熱中症の重症である熱射病は処置が遅れると高体温から多臓器障害を併発し救命できなくなる危険な状態です。軽く考えず、ご自分も家族も仕事場でも気をつけてあげて下さい。

転載:月刊東洋療法340号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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