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医者いらず健康長寿処方箋(94)

健康科学研究所所長・大阪市立大学医学部名誉教授 井上正康


 井上正康先生は、癌や生活習慣病を「活性酸素」やエネルギー代謝の観点と、地球や生命の歴史という大きな視野で研究されている国際的研究者です。現在、多くの府県師会主催の公開講座で講演され大好評を博しています。ぜひ貴師会でも!
ご連絡はURLより。 http://www.inouemasayasu.net

「新型コロナ騒動の正しい終わらせ方」

 2019年秋に誕生した新型コロナはRNA遺伝子の分子特性により約2週間に1度の割合で変異しながらパンデミックとなり、2年間に万を超える変異株集団へと拡散進化した。その中で感染力が増強した変異株が誕生する度に発見国の名前で呼ばれてきた。しかし、3万個の塩基からなる新型コロナの遺伝子は世界中で同時多発的に変異しているので、名前以外の国で誕生した可能性もある。この為、新変異株を国名で呼ぶ事は非科学的であり、新変異株をα、β、γ、δ、μなどとギリシャ文字で呼ぶ様になった。
 2020年9月に英国で発見されたα株は、3ヶ月後には感染者の60%以上を占めて集団免疫が確立されていた。日本でも同年12月にα株が発見され、オリンピック開催前に全国に拡散され、PCR陽性者の80%以上がこの株で占められていた。これに過剰反応したメディアや政治家などが、「緊急事態宣言の最中にオリンピックを開催するなどは言語道断である!」と菅政権を厳しく非難した。その為に歴史的なオリンピックも大変寂しい無観客となったが、宴が終わってみると何事も起こらなかった。現在、欧米ではスポーツ観戦の大半が満席でノーマスク状態であるが、メディアや専門家は相変わらず無効な人流抑制策を声高に叫んでいる。
 2020年10月にインドで発見されたδ株も急速に国内に広がったが、現在では70%の抗体陽性率で集団免疫が確立されて完全収束している。インドのワクチン接種率は現在でも17%に過ぎないので、この集団免疫はδ株の自然感染で確立されたものである。変異株へのシームレスな自然感染が理想的な免疫強化法であることは免疫学の初歩的知識である。ワクチン先進国でブレイクスルー感染したδ株は、夏前の日本で主流だったα株を急速に上書きして多くの国民に無症候性感染し、アッと言う間に収束してしまった。δ株の急激な収束理由が解らないと頭を抱えた多くの専門家が様々な珍説を提唱している。その中には「夏にはクーラーで窓を締め切って換気が悪かったが、涼しくなって窓を開けたので速やかに改善されて収束した」などと驚愕的な珍説も現れた。東京大学のK教授は進化生物学者Eigen博士が50年前に提唱した『エラーカタストロフ説』を持ち出し、「過剰な突然変異でウイルスが自滅した為」と説明されている。これは研究室などの閉鎖空間的実験条件では起こりうる現象であるが、野に放たれた無数の変異株がランダムに変異するウイルス集団ではエラーカタストロフ説は現実的ではない。N501Y変異を持つコロナ集団をα株と総称しているが、遺伝子内には23カ所もの変異があり、スパイクのアミノ酸が17カ所も置換されている。δ株も「L452R」と「E484Q」のスパイク変異で感染力が激増したが、3万個の塩基中に多様な変異を有する亜株が多数存在する。α株もデルタ株も多様な変異株集団の総称であり、彼らが同時に変異絶滅することはあり得ない。SARS-COV2を“新型コロナ”と呼んでいるように、コロナウイルスには旧型株が存在する。コロナウイルスの分子時計で逆算してみると、130年前のロシア風邪に辿り着く。このロシア風邪のウイルスが元祖コロナであり、2019年秋まで突然変異を繰り返しながら4群の旧型コロナとして130年間人類と共存してきた。その中の3群はインフルエンザと同様に上気道粘膜の糖鎖シアル酸に結合して感染し、喉が痛くなるタイプの風邪コロナである。残り一群(OC43株)は新型コロナと同様にACE2受容体標的型のウイルスであり、昔から“タチの悪い風邪”と呼ばれてきた病原体と思われる。100年前にパンデミックとなったスペイン風邪もインフルエンザウイルスとして変異を繰り返しながら人類と共存してきた。新型コロナも免疫の壁に囲まれながら消滅することなく、“トロイの木馬”のように次にデビューする機会をうかがっている。非生命体でもある両ウイルスは変異を繰り返しながら人類と共存していくであろう。その際に、時々SARSやMERSの様な強毒株として一過性のお祭りを演じては次の株へと変異していく。
 旧株の遺伝情報に基づいて設計されたワクチンは、新変異株に対して常にハンディーを有しており、 感染予防のフロントラインである自然免疫を強化する作用が弱い。ウイルス感染では新たな変異株に緩やかに暴露し続け、自然免疫、液性免疫、細胞性免疫をバランスよく免疫力を更新することが重要である。感染症の歴史でウイルスの感染動態をPCR検査で可視化したのは今回が初めてである。このPCR陽性波を経時的に診ると、波の度に陽性者が増えていく事が一目瞭然である。これは感染力が増強した新変異株が旧株に追い付いて上書きするからである。日本では2020年夏までに5回ものPCR陽性波が観察されており、国民は5回以上もコロナの変異株に暴露されて免疫軍事訓練を済ませている。この為、安全性に大きな問題がある遺伝子ワクチンを接種しなければならない理由はない。
 最近、インフルエンザと新型コロナに同時感染させたハムスターが重症化するとの動物実験を長崎大学が報告し、両ウイルスによる冬季の二重感染の可能性を警告した。これに関しては、旧株より感染力が6倍増強した新型コロナ武漢株により世界中でインフルエンザが絶滅状態に追いやられた事実が重要である。δ株は武漢株を遥かに凌ぐ驚異的感染力を獲得しており、インフルエンザはウイルス干渉で大きなハンディーを有する。この為に、自然環境下では二重感染でインフルエンザが返り咲く可能性は低く、δ株が更に感染力を増強したδ亜株による第6波の襲来が現実的シナリオと思われる。日本人はδ株に対する集団免疫で抵抗力が大きく強化されており、重症化率や死亡率も有意に低下している。しかし、次の新変異株では感染力が増強した分だけ多くの方が発症して目立つ様になる。この為にメディアや専門家が過剰反応して国民を煽らない様に冷静に見守る必要がある。冬季には“タチの悪い風邪”が流行りやすいので、『口腔ケア、手洗い、うがい、鼻洗浄、トイレのアルコール消毒』を小まめにやりながら、緩やかな暴露で免疫力を強化することが大切である。鼻洗浄は、生理食塩水(食塩9 g/L水道水)で行うと粘膜に優しく、口や鼻から侵入するインフルエンザ、新型コロナ、ノロウイルスなどの多様な病原体を有効に排除する優れた感染予防法である。是非、お試しあれ。

転載:月刊東洋療法332号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

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