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Dr.タコのお気軽クリニック 「ベジタリアンという生き方」343号

 小太りだった友人が久しぶりにあったら急にスマートになって元気そうだったのでわけを聞きました、すると「食生活を変えたのさ、簡単に言えば、ベジタリアンになったというところかな」とのこと。今回はダイエットにまつわるノンフィクションでのご報告です。

 日頃外来で患者さんの肥満(なんとか痩せたい)に頭を悩ませているのはもちろん、狂牛病、O157食中毒、豚熱、鳥インフルエンザ、鯉ヘルペスなど、食肉に関する不安が増大していることも相まって、半信半疑ながら話を聞いてみました。
 菜食をすすめるある本がきっかけで、彼は肉食を減らすようになり、午前中は果物と野菜で作ったジュースをたっぷり飲み、昼と夜は肉も少しはとるが、野菜を中心にしたメニューにしたところ、非常に便通がよくなり、半年で無理なく5~6キロ減量したとのこと。
 「腹一杯食べてもいいから全然ひもじくないし、かえって体調が非常にいいんだ。いままでの食事の量がいかに多すぎたかよくわかったよ」。
 確かに糖尿病・高血圧・高脂血症・痛風など、生活習慣病の大半は食べ過ぎが原因であると言われます「腹八分に病なし」とはよく言ったもの。肥満は高血圧や糖尿病などと結びつき、やがては脳血管障害や心筋梗塞などを引き起こします。
 ベジタリアンはこれらの病気を起こしにくいのはもちろん、ある種の癌の発症率も低いというデータもあるのです。癌という漢字を見ればわかります、やまいだれに口が三つも並んでいるのです(過食が関与している?)。
 果物や生野菜は約70%が水分で、人体に近い成分なのです。各種ビタミンやファイトケミカル(野菜や果物・豆類に含まれている化学成分で、植物が紫外線や虫から身を守るために生み出した香りや色素のこと)が多く含まれます。
 これに対し焼いた肉は水分がほとんどなく、消化・吸収に非常なエネルギーを要します。肉をたくさん取り込むことで、食後からだが重くなるのはこのためもあります、「肉の100カロリーとリンゴの100カロリーは、全く別物なのさ」
 摂りすぎたカロリーは脂肪肝や皮下脂肪などの形で蓄積されてしまいます。もともと人間は飢餓にさらされていた期間が長いため、余分なエネルギーは捨てずにため込む仕組みがあるといわれます。これが残っているために、現代人はみな太りやすい体質といえます。
 そもそもベジタリアン Vegetarian という言葉は野菜のベジタブルではなく「健全・新鮮・元気のある」という意味のラテン語 vegetus に由来します。一言でベジタリアンと言っても幅広いグループがあり、一般的なベジタリアンは肉や魚を食べないのですが、ヴィーガンは卵・乳製品・ハチミツも口にしません。
 「家畜を飼育するには大量の牧草や肥料、水を必要とし、燃料もかかるじゃないか。それ(水以外)を必要としない野菜を食する菜食は、地球に優しい生き方なんだよ」と彼は言う。一説では牛肉1キロを得るのに餌として穀物11キロが必要で、水はその2万倍!も必要だという’バーチャル・ウォーター’という指摘があり、昨今の食糧事情を考えると非常に説得力があります。
 ステーキに舌鼓を打ち、焼肉を頬張っている自分がそんな自然破壊・資源の浪費に加担しているかもしれないと知ったらどうですか?実はトルストイ、宮沢賢治、ガンジーやジョン・レノンなど、思想家にはベジタリアンも多いのです。単に殺生に反対して野菜しか食べないという古いイメージではなく、地球環境まで考えた人生観でもあるということを彼は教えてくれました。
 以来、タコも実践してみました。肉を食べないというと貧素なようですが、意外と昔ながらの日本料理はほとんど食べられます。野菜や果物の美味しさもあらためて知りました。専用のメニューを置いているレストランも増えてきています。
 野菜を最初に食べるのがいいとはよく言われます、糖質制限や○○ダイエットの類は沢山あり、医者もこれが正解ですとは言えないのが現状です。SDGsが叫ばれる昨今、体にも地球にもやさしいベジタリアンという生き方、皆様もちょっと取り組んでみませんか?

転載:月刊東洋療法343号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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