トップ > お知らせ一覧 >Dr.タコのお気軽クリニック 「高血圧もいろいろ」346号
血圧計が普及して、家庭や職場などで気軽にはかれるようになりました。当院でも家庭血圧測定をすすめています。患者さんから「家ではかるのと病院ではかるのとだいぶ違うんだけど、どっちがホントですか?」などと言われます。そこでタコの血圧あるあるです。
血圧計には測る場所だけでも上腕・手首・指で測るもの、今時のスマホの対応機能のものなど、いろいろで、基本的には上腕で測るものが正確です。ただ、測定は大切ですので、手首の血圧計は持ち運びには便利です。精度が気になる場合は、一度医院に測定器をお持ちいただいて、測り比べることで誤差のチェックをお勧めしています。
血圧は運動・食事・トイレ・温度などの他、自律神経や精神的なストレスの影響を受けやすいため、一日の中でも刻々と変化しています。これが意外と常識ではないようで、「測ると毎回違うんですけど」とよく聞かれます。
単純に言えば、夏下がって冬あがる、朝高めで夜は下がる、という季節・日内変動があります。また体重が増えるほど血圧は上がりがちで、逆に減量すると血圧は下がることが多いのです。少し高くても、2−3回深呼吸したり、水を飲んだりで10~20mmHgくらい下がることも変動に関与しています。
お酒も、飲んだあとはリラックスして下がることもありますが、長年の飲酒習慣は高血圧の原因になり、禁酒して薬から卒業する人もいる程です。
そのときの血圧という意味ではどれも本当なのですが、あまり数値にとらわれすぎると血圧ノイローゼになりかねないので注意して下さい。心配するほど上がりがちです。
長い間続けてはかれば、その人のパターンがわかります。自宅では正常なのに、診察室ではかると血圧が上がるかたは「白衣高血圧」として知られています。この場合脳卒中などになる危険は正常者と同程度で、積極的な治療は不要とされます(将来の高血圧の予備軍であるとの報告もあり測定は続けて下さい)。
長年通院しているのに、外来で測るととても高い方がいます。「病院に来ると思うと前の日から緊張してしまって」と言われたりして「じゃあ病院に来ないほうがいいよね」とタコは結構へこみます(笑)。
一応「病院だけ高いのか、もしかして仕事中も高いかもしれないので、たまに職場で測ってみてください」と注意もします。この場合「職場高血圧」という言葉があるほどで、その時間が長ければ、やはり高血圧に違いはありません。職場高血圧は、検診や病院では逆に見逃されてしまう可能性もあります。会社も社員の健康管理が厳しく問われるようになりましたので、是非職場に血圧計を置いていただければと思います。
さらに逆の現象もあり、診察室で測る血圧がふだんの血圧より低くなる状態で「正常血圧という仮面を付けた高血圧」という意味で「仮面高血圧」とよばれます。脳心血管の合併症を起こす危険が非常に高い状態として注目されていて、その割合は診察室での血圧が正常な患者さんのうち約10~20%とされます。
仮面高血圧は仕事のストレスが強い方やヘビースモーカーなどに多いと言われ、喫煙で血圧は急に上昇します。休憩の意味で一服するといいますが、タバコを吸うのは心血管系に負担になるわけです。待合室でくつろいでいるうちに血圧が下がるのではとされます。
これらを見つけるためにはやはり自宅や職場での血圧測定が重要です。起床後一時間以内でトイレを済ませた後に朝食前、また降圧薬を飲む前に測定します。この時間に血圧が高い場合は早朝高血圧の可能性があります。さらに就寝前にも測定すれば、夜間も持続して高いのか、ある程度予測できます。
「持続高血圧・夜間高血圧・早朝高血圧」いずれも心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクが高いことが知られています。最近はいわゆるスマートウオッチで、血圧を測定したり、スマホで血圧データを管理したりする人も増えてきました。健康アドバイスをしてくれるアプリまであります。血圧測定を習慣にして、血圧手帳やアプリのデータを受診の時に主治医に見せましょう。一家に「体重計、体温計、血圧計」の3計をお勧めします。
転載:月刊東洋療法346号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会
Dr.タコ 昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。