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Dr.タコのお気軽クリニック 「疲れがとれない」347号

だるい、疲れるという漠然とした感じは日常よく経験します。過労や寝不足などが原因であれば休養することで回復するでしょう。ところが慢性的に疲労を感じる場合は、生活習慣が原因だったり、病気が潜んでいたりすることがあります。毎日スタミナドリンクを愛飲している高齢者が多いのにびっくりします。疲労の原因をチェックしてみましょう。

■タバコ:一服すると疲れがとれるように感じるかもしれませんが、タバコを一本吸うとレモン半個分のビタミンCを消費します。ビタミンCは疲労回復物質ですから、その摂取が不十分だと疲労がたまる一因になります。女性では肌荒れの原因にもなります。発がん性も含めて多くの害があることは言うまでもありません。
■アルコール:肝臓は身体のバッテリー(電源)です。アルコールの解毒にかかりきりになる分、スタミナを失います。肝機能低下で乳酸値(疲労原因物質ともされる)が下がりにくくなり疲れがいつまでもからだから消えない状態になります、いわゆる二日酔いです。アルコール濃度が高くなると心筋の再生を抑えるともされ、心臓の力さえ落として、長期的にも疲労感につながってしまうのです。
■過剰な砂糖:砂糖は分解の際にビタミンB1を消費し、これはエネルギーの生成に関与し、不足するとストレスへの抵抗力が落ちます。脳内の不安感情を鎮静させるとされるGABA(アミノ酸の一種。カカオをはじめトマトや発芽玄米等の野菜・穀物に含まれ、ストレスの低減機能があることが報告)の生産も低下します。菓子や砂糖入りの清涼飲料水をとりすぎると疲れやすく心身不安定になるといわれます。増加している子供のADHD(注意欠如多動症)との関連も懸念されます。
■カフェイン:コーヒー等は覚醒作用があり短時間は疲労感を改善しますが、過剰に摂取すると神経過敏、動悸、胃腸症状、頻尿、不眠など悪影響が出ます。スタミナドリンクもカフェインが入っていることが多く、疲労感を麻痺させているので、一時的な高揚を得ますが、休養しなければ身体に鞭打っていることになりあとで反動がきます。最近のエナジードリンクも、大量のカフェインを含むことが多く、過剰摂取での若者の死亡例も報告されており、中毒性もあるため注意が必要です。
■ダイエット:無理なダイエットはカロリー不足とともにビタミン不足の結果、疲れやすい体質になります。カップ麺やコンビニ弁当を常食し、サプリだけで不足分を補充できると考えるのも危険です。流行の糖質ダイエットは、短期的には体重減少や血糖低下の効果が期待されますが、長期的には発がん性を高めるなど負の報告もなされています。
■栄養不足:良質な蛋白に含まれるアミノ酸であるトリプトファンが不足すると、セロトニン不足になります。これは幸福感や神経の安定、やる気に関係する神経伝達物質で疲労と大きく関わります。セロトニン神経系が弱ると、食欲低下、不眠、抑うつ気分や不安に陥りやすくなります。魚・卵・乳製品・大豆製品・果物等をバランス良く摂り、日光に当たり規則的な運動が推奨されます。
■過食:消化吸収はじつは大変なエネルギーを要します。なので食直後すぐに動くのはお勧めしませんし、昼寝でもできたらよいですね。腹一杯食べてスタミナをつけて、と言いますが、逆に過食も疲労の原因になり得るので、腹八分で胃腸を休ませてあげましょう。
■脱水:真夏に熱中症で徐々に元気がなくなる高齢者はよくみられることですが、実は冬場も油断できません。汗をかかないので喉の渇きに気付きにくく、乾燥や電気毛布で脱水になっていることもあります。意識して水分を補給しましょう。
■運動不足:運動すれば疲れると思うのですが、定期的な運動は心肺機能を高め、ストレス発散にもなります。廃用性萎縮といって筋肉も使わなければ弱くなります。疲労感からますます運動意欲を失い、少しの動きでしんどくて運動しなくなるという悪循環に陥ります。逆に適度な運動で維持された肉体は「爽やかな疲労感」さえもたらしてくれるのです。
■うつ病:じつは蓄積する疲労の原因はストレスや精神的な要因が最も多いと言われます。朝やる気が出ない、気が滅入る、何事にも興味がわかない、眠れない、食欲がない、などの症状がある場合はうつ病も疑われます。精神科やメンタルクリニックを受診しましょう。
■その他:疲労感の原因として低血圧、糖尿病、貧血、ホルモン異常(甲状腺機能低下、副腎機能低下など)、肝臓病、腎臓病、感染症、悪性腫瘍、膠原病、自律神経失調症、慢性疲労症候群、薬の副作用などがありえます。
 いつもと違うだるさや長引く疲れは要注意です。痛みや発熱と同様、これ以上無理すると大変なことになりますよという警告の一つですから、しっかり改善・休養し、改善しない場合は病院で原因を精査しましょう。

転載:月刊東洋療法347号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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