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医者いらず健康長寿処方箋(101)

健康科学研究所所長・大阪市立大学医学部名誉教授 井上正康


 井上正康先生は、癌や生活習慣病を「活性酸素」やエネルギー代謝の観点と、地球や生命の歴史という大きな視野で研究されている国際的研究者です。現在、多くの府県師会主催の公開講座で講演され大好評を博しています。ぜひ貴師会でも!
ご連絡はURLより。 http://www.inouemasayasu.net

「爪楊枝と無症候性パンデミック」

 先日の読売新聞オンライン版で「北朝鮮では新型コロナ感染者が急増し、十分な医療インフラが無いことから『塩水で口をよくすすぎ、柳の葉を煎じて1日3回飲む民間療法』が国の対策となっている」との記事が目に付いた。北朝鮮では新たな発熱患者が29万人いるとの事である。
 この国の正確な情報は分からないが、時期的には“無症候性パンデミック”のオミクロン株に感染していると推測される。オミクロン感染者の大半は無症状であるが、発症した場合は“典型的な喉風邪の症状”が見られる。
 古くから、発熱、疼痛、炎症などの特効薬としてアスピリンが用いられてきた。アスピリンは柳の樹皮から抽出されたサリチル酸から合成された解熱鎮痛剤であり、世界中で服用されている。
“楊柳”は柳の枝から作られたことによる名称であり、“爪楊枝を使うと歯痛が治る事”から、柳の樹皮や葉に抗炎症成分が含まれていることは日本でも古くから知られていた。京都の三十三間堂でも「楊枝浄水加持会」が行われ、柳の枝をさした浄水を信徒の頭上に注ぎ、頭痛寛解、無病息災、悪病除去などを願っている。寺で渡される「頭痛のお守り」にも柳が入っている。
 柳の樹皮に鎮痛解熱作用があることはギリシャ・ローマ時代から知られていた。紀元前の医聖ヒポクラテスも“柳の皮に鎮痛作用がある”と述べている。1826年にイギリスのストーン神父が柳から有効成分を分離し、柳のラテン語名サリックスから“サリシン”と命名した。その分解物のサリチル酸はリウマチの特効薬として汎用されてきた。サリチル酸は苦味が強いことから“良薬は口に苦し”との格言も誕生した。
 1897年にはドイツの化学者フェリックス・ホフマンがこれをアセチル化してアセチルサリチル酸を開発した。これが“アスピリン”であり、解熱鎮痛剤、リウマチ薬、サロンパスなどの湿布薬として世界中で汎用されて巨万の富を築いた。その誘導体であるパラアミノサリチル酸(パス:PAS)は結核の特効薬である。人生50年と言われた第二次世界大戦直後は結核が国民病であったことから、多くの日本人がPASの恩恵を受けた。戦時中に零戦の設計を担当していた義父もその一人であり、PASの恩恵で元気に長寿を全うできた。妻と三人の子どもや孫達に恵まれながら後期高齢者として現在も人生を堪能させていただけることも義父を救ってくれたPASのお陰と感謝している。
 一方、アスピリンは小児の水痘やインフルエンザなどで激しい嘔吐、痙攣、意識不明などを誘発し、重篤な肝障害で“ライ症候群”と呼ばれる薬害も誘発した。この為、イギリスでは12歳以下の小児にはアスピリンを使わないことになっている。
 100年前のパンデミック『スペイン風邪』では、世界で約1億人もの人々が亡くなった。世界人口が約15億人だった当時には凄まじい疫病であった。実は、スペイン風邪は米国カンサス州の兵舎で発症したインフルエンザであり、ボストンから米兵が軍艦でヨーロッパ戦線に持ち込んで拡散させた“米国ウイルス”であった。本来なら“アメリカ風邪”と呼ぶべきところであった。当時、“重篤な感染症の情報”は重要な軍事機密でもあった為に、この“アメリカ風邪”に関しては厳しい情報統制がなされた。しかし、この大戦に参戦していなかったスペインが猛威を振るう風邪の情報を世界に発信し続けた結果、『スペイン風邪』と呼ばれる汚名を貰う事になった。今回の新型コロナは“武漢ウイルス”と呼ばれているが、その真相は今なお不明である。中国は“動くものなら何でも食べる貪欲な食文化”の国であり、「人獣共通感染に起因する新興感染症は常に中国で誕生する」と言われる所以である。
 スペイン風邪では米国が敵国ドイツの特許を無視してアスピリンを大量合成し、2年目の流行時に兵士達に大量投与していた。実は、このアスピリンの過剰投与による薬害が多数の死者を出していたのである。これが「スペイン風邪では第1波より2波での被害の方が大きかった事の真の理由」である。その事に気付いた米軍が、3年目にアスピリンの乱用を中止したところ、パンデミックは自然に収束した。この人災的薬害がなければ、スペイン風邪も1年で収束していたのである。これはメディアや専門家に煽られて過剰反応し、危険な遺伝子ワクチンの乱用で多数の後遺症患者や死者を激増させている現代のワクチン行政と酷似している。
 実は、スペイン風邪の30年前に新型コロナのルーツである“元祖コロナウイルス”により“ロシア風邪”がパンデミックとなっていた。ロシア風邪の時代には有効な医薬品やワクチンもなかったが、“ノーガード状態”でも1年で自然収束した。100年の時を超えて、“この人災的薬害が無ければスペイン風邪もロシア風邪同様に第1波で収束していた可能性”は、現代の“新型コロナ騒動とワクチンヒステリー”に対する歴史からの重要なメッセージである。
 スペイン風邪は当時5,000万人の人口だった日本にも上陸し、約40万人が死亡している。当時の写真を観ると、現在と同様に100%近い国民がマスク姿である。咳やクシャミが顕著なインフルエンザでは、発症者がマスクをすることで一定の効果がある。しかし、血管壁のACE2受容体を介して感染する第5波までの新型コロナ病態の本質は血栓症である。この為、「咳やクシャミが無いのでマスクの効果も無いこと」がデンマークの大規模比較試験で早い時期に明らかにされていた。歴史と科学を学ばない国民は大きなツケを払わされる事になる典型例である。
 北朝鮮の劣悪な免疫栄養状態ではオミクロンでもリスクはありうる。しかし、無症候性パンデミックのオミクロンは“典型的な喉風邪のウイルス”であり、北朝鮮でも重傷者や死者は増えていない。「塩水でのウガイと柳葉の漢方薬」に加え、鼻洗浄や葛根湯とノド飴を追加すれば十分であろう。間違っても、危険な遺伝子ワクチンや怪しげなコロナ新薬を乱用すべきではない。

転載:月刊東洋療法339号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

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