トップ > お知らせ一覧 >Dr.タコのお気軽クリニック 「薬に関するQ&A」349号
具合が悪いといって病院にかかれば何かしらの薬が出ます、多くの種類の薬を飲んでいる方も多いと思います、かかりつけ薬局が提唱されたように、飲み合わせなど薬の内服には注意が必要なのも事実です、薬に関する注意点をまとめてみました。
■ 血圧の薬とグレープフルーツジュースを一緒に飲んではいけないのですか?
高血圧の薬の中でカルシウム拮抗薬という種類を内服している方に関係します。グレープフルーツやその加工食品を一緒に取ると、薬の作用が強く出て血圧が下がりすぎる可能性があるというものです。むやみに心配せずにご自分の薬を確認してください。これ以外の薬では関係ありませんし、グレープフルーツ自体には実は血圧を下げる作用があります。
■ 心臓の薬を飲んでいる人は納豆を食べてはいけないと言いますが?
心房細動などの不整脈があり、血栓(脳梗塞)予防のためにワーファリンという薬を飲んでいる場合に、納豆などを食べるとワーファリンの作用が減弱します。定期的に血液検査をして内服量を調節するほどさじ加減が大事な薬ですので、このような食品を食べないでということです。不思議なことに、納豆自体には血栓の予防効果があります。最近はこのような懸念のいらない新薬も増えています。新型コロナのワクチン接種の問診票でも問題になりましたが「血液をサラサラにするお薬」に該当するのがこの手の薬です。ワクチン接種に支障があるというよりは、注射後の止血に影響するということで聞いています。
■ 薬をお茶や牛乳で飲んでも大丈夫?
貧血の薬(鉄剤)はお茶のタンニンという成分で吸収が悪くなると言われますが、通常の緑茶であれば問題ないとされます。牛乳も吸収に影響がありえますので、お茶も牛乳も飲むタイミングをずらせば良いと思います。大事なことは忘れずに内服を続けることです。
■ 食後に飲む薬は食べないときは飲まない方がいいですか?
朝一回の内服の場合「朝6時に飲んで」とは決められず、朝食後と指定すればわかりやすいという事情です。降圧薬などは毎日定時で飲むことが望ましいので、食事を抜いたときもキチンと飲みましょう。ただし鎮痛剤など胃に負担になるので空腹を避けることが望ましい薬や、糖尿病薬など食事なしには飲まない方がよい薬、逆に食後では吸収が悪くなる薬、制酸剤と飲むと効果が落ちる抗生物質など様々ですので、医師に確認してください。
■ 薬の飲み合わせが心配です
薬同士には同時に飲むと互いに影響することが報告されているものがあり、組み合わせが禁忌とされるものもあります。医師も薬剤師も注意しますが、知らずに飲むと危険です。もらっている薬を「お薬手帳」にまとめることで予防できます。また以前アレルギーが出た薬はしっかりとその名前を記録することが大切です。
■ 食前の薬の飲み忘れが多いのですが
糖尿病の薬などで「食前に飲んでください」という薬があり「食後の糖の上昇を抑える」という作用ですが、食前に飲むというのは忘れがちですね、個人的には「食後でも思い出したら飲んで結構です」といいます。効果は減弱しますが飲まずに放置するよりはマシという理由です。このように、飲み忘れで薬が余っている場合は、恥ずかしがらずに、主治医に告げて次回の処方を調節してもらってください。残薬の削減は医療費を減らす意味でも重要です。
■ 血圧が高くないときには薬を飲まなくても大丈夫でしょうか?
血圧は一日の中で常に変動します。朝方高い人が多いのですが、夕方上昇する人もいます。何ヶ月か血圧を測って高血圧と診断された方が薬を飲むわけですから、たまに低いからと言って自己判断で中止するのは危険です。薬は急に中止するとかえって血圧が上がることもあります。最近は一日一回の内服で翌朝まで効果が持続する薬がほとんどです。患者さんが高い低いと感じるレベルと、医学的に適正な血圧は食い違っていることが多いです。自己判断せず主治医にご相談ください。
■ 血圧の薬は一回飲み始めたら一生やめられないといいますが?
まるで麻薬に手を染めるかのような表現ですね。薬は飲まないに越したことはない、薬を飲んでいると病人のレッテルを貼られていやだという気持ちもあるでしょう。食事・運動療法で血圧が下がって薬をやめられる人もいますが実は困難な道です。数粒の薬を飲んで動脈硬化性疾患や、合併症後の制限された生活を回避できると思えば良いのではないでしょうか?
■ 「保険に入ると思ってください」とお話します
火災保険はかけても火事にならないわけではありませんが、薬物治療は病気のリスクを減らし決して掛け捨てではありません。自覚症状に乏しいこともあり、自己判断で加減したり、中断したりしてしまう方も多いのです。高血圧の半分は放置され、患者さんの半分しか治療目標に達していないとも言われます。噂や世間体に惑わされずに、自身の健康をきちんと管理したいものです。
転載:月刊東洋療法349号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会
Dr.タコ 昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。