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Dr.タコのお気軽クリニック 「マイカルテのすすめ」 350号

 新型コロナの集団ワクチン接種事業に従事させていただいた時に、問診で驚くことがあります。自分の飲んでいる薬がわからないとか、病名も伝えられない方が結構多かったのです。お薬手帳を出す方は有り難かったです。そこでタコの「患者さん心得」指南集です。


 さて、あなたの病名は何でしょう。毎日飲んでいるのは何の薬ですか。尋ねられてすぐ答えられますか?「なんだかわからないけど先生の言うとおりに飲んでいる」でいいのでしょうか。
 せっかく健診を受けても「要精査、要治療」と書かれたものをしまい込んで「異常なかった」という方も多いのです(結果票も字が小さいしわかりづらいのもあります)。健診は結果を適切に評価してこそ意味があります。結果をもらったときがスタートです!まずはかかりつけの医師に見せて説明してもらいましょう。
 健康診査や病院を初めて受診したときにはまず問診されます。これまでどんな病気をしたか、薬のアレルギーはないか、家族に遺伝病(がんなどの悪性疾患、高血圧・糖尿病など)の人はいないか、輸血歴はないか、などです。症状の原因や、病気のリスクの評価を含めて、じつはここが医者の腕の見せ所とも言えるのですが、患者さんはそう思っておられないようです。
 健診や病院を変えるたびに振り出しに戻ってうんざりしたことはありませんか(聞く方も大変です)。年とともに記憶が曖昧になったり、忘れたりすることも多くなります。それが薬剤アレルギーの情報では命に関わることもありえます。
 例えば「以前、風邪薬や抗生物質でアレルギーになったことがあります」となれば、うかつに鎮痛解熱剤は出せなくなってしまいます。
 自分の健康情報をまとめた「マイ・カルテ」のようなものを持つことがとても大切です。病気、治療の内容を知ることは医療側だけでなく、ご本人に最も有益なのです。最近はこの機能をマイナンバーカードで対応しようとしているようですが、情報共有には病院側の情報提供体制の整備が必須です。そこまでの手間をかけなくてもアナログで可能なのです。
 既往歴・現病歴・血液型などの記録は、万が一救急車で運ばれたときにも威力を発揮します。自らを守るだけでなく、時間の節約、ひいては医療の無駄を減らせるかもしれません。災害時、避難所でも大事な情報としてすぐに取り出せるように備えようという活動もあります(冷蔵庫保管医療情報キット)。
 高血圧・糖尿病などの生活習慣病の場合、治療の主人公はご本人です。医師に血圧手帳や糖尿病手帳を見せることができれば優等生です。白衣高血圧(病院に来ると血圧が上がる)でないかを知るためにも自宅での血圧測定は役立ちます。
 最近はスマホ向けの健康管理アプリもあり、グラフ化したり平均を算出したり、アドバイスまでしてくれるので、ぜひ活用してください。
 遺伝・脂質異常症・高血圧・糖尿病・肥満・喫煙など、動脈硬化の危険因子をどれだけ持つのかを知ることは、それらをいかに減らしていくかを考えるきっかけにもなります。
 処方薬の一覧が貼ってあるお薬手帳も活用しましょう。あちこちで薬をもらっているときは飲み合わせが非常に危険なことがあります。最近はかかりつけ薬局制度もできていますが、飲んでいる薬を見ればどのような病気をお持ちかも、わかることが多いのです。
 糖尿病や癌、むくみなど、無症状でも体重変化として現れる病気があるので、体重も大事な記録です。当院では毎回体重測定をして患者さんには嫌がられますが、そういう意味があるのです。
 予防接種の記録は、子どもの将来に役立ちます。また、家系に悪性疾患の方がいれば、遺伝の可能性から中年以降はそれらを重点的に検査する必要性もわかります。
 形式にはこだわらず健康手帳やメモ帳などにまとめるので大丈夫です。自分の情報をいかに掌握しているかが大事でかかりつけ医の大切さもここにあります。
 健康保険証の廃止、デジタル化や制度としてかかりつけ医を進める動きが見られますが、大事なのは人任せにするのではなく、自分のことは自分がよくわかっています、と胸を張って言えることだと思います。

転載:月刊東洋療法350号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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