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Dr.タコのお気軽クリニック 「お酒に関するQ&A」 352号

タコの住む地元は酒の消費量が長年地域1位であると同時に、心疾患・脳卒中・ガンのほか自殺による死亡者数でも常に上位です。これらに関連はないのでしょうか。すると驚きの事実が判明!酒好きのタコには厳しい話題を自戒を込めて頑張って取り上げます?

 かつてのロシアでは1985年から4年間の禁酒政策の結果、自殺が3割ほど減少しました。わずかな年月の間に、事故・暴力・肝硬変による死亡者数が半減し、平均寿命も急速に延長したのです。残念ながら政策が解除されると再び元に戻ってしまったそうです。


Q. 毎日CMで宣伝しているじゃないですか?
A. 日本人は欧米人に比べてアルコール分解酵素の活性が低い人の割合が多く、アルコールによる障害はより大きいとされます。しかし日本の社会では酒は特別扱いされ、広告にも外国ほど規制はありません、毎日昼から美味しそうにビールを飲むCMが普通に流れていますが、北欧やフランスでは酒のCMは全面放送禁止です。
Q.「酒は百薬の長」じゃないんですか?
A. 酒の効用を示す報告にはトリックがあるとの指摘があります。「酒を全く飲まない人」には、酒で病気になり飲めなくなった人を含んでいるため少し飲む人よりも短命になるというもの。そもそも「酒は百薬の長」のあとには「されど万病の元」と続くのですが、その部分はあえて見逃されています。
Q. 若い女優が美味しそうに飲んでますけど
A. 最近は若い女性や未成年者の飲酒が増え、キッチンドリンカー(女性が家事をしながら飲酒し、依存症につながっていくパターン)も増加しています。女性はアルコールの害を受けやすく、男性のおよそ半分の期間と量で依存症になってしまうのです。おしゃれなイメージで新たな顧客を取り込もうという作戦でしょうか。
Q. 高校で急性アル中になった友人がいました
A. 中学生の半分近くが一度は酒を飲んだことがあるといいます。10代の飲酒が危険なのは、①脳が萎縮して知能低下を起こす、②性機能に影響が出る、③急性アルコール中毒をおこしやすい、④短期間で依存症になりやすい、などの可能性が高いからです。
 かつて夜間でも自動(児童)販売機で酒が販売されていましたが、現在では見かけません。とはいえ24時間コンビニで手に入る状況には変わりありません。大学の新歓コンパで亡くなるほどの親不孝があるでしょうか?
Q. 大人なら少し飲んでも大丈夫じゃないですか?
A. もちろん大丈夫ではありません。アルコールと肥満・ガン・高血圧・心筋梗塞・肝硬変・認知症・脳卒中・うつ病・自殺との因果関係を示すデータは数多くあります、しかも必ずしも大量に飲んだ場合だけでなく、毎日少量の飲酒から危険は増しているという警告もされました。
Q. お酒を飲み続けるとボケますか?
A. アルコール依存症や大量飲酒者には脳萎縮が高い割合でみられ認知症になる人が多いといった疫学調査結果から、大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが示されています。
Q. 飲んだ後はリラックスして血圧が下がります
A. 飲酒後一時的に血圧が下がるのは事実ですが、長期の飲酒は高血圧の原因になります。当院でも高血圧の患者さんで降圧薬3剤でも血圧が下がらなかったのに、下血を機に禁酒したら血圧が下がって薬を全く必要としなくなった方がいました。
Q. 肝臓や膵臓に悪いだけではないですか?
A. 酒類を全く飲まない宗派では循環器疾患(心筋梗塞や脳卒中など)による死亡率は他のアメリカ人やカナダ人の半分以下で、ガンによる死亡率も約半分というデータがあります。アルコールは老化・発ガンの一因として注目されている活性酸素を発生させ、直接DNAを傷害するほか、肝臓の解毒作用を阻害し免疫系の防御機能も侵害します。これらが各種のガンの発生を助長していると考えられます。
Q. ストレス発散にはいいのではないですか?
A. 憂さ晴らしで酒を飲むという人もいますが、過量の飲酒はかえってうつ病の危険性を高めます。二日酔いの気分を味わったことがある方は少なくないでしょう?後ろめたさや減酒の必要を感じている人の多くはすでに依存があるとも言われます。アルコール依存症は自然治癒することはまずなく、治療しなければ平均寿命は52~53歳程度という恐ろしい病気で、うつ病になる率が4倍高くなり、自殺の危険性も3~8倍にもなります。
Q. 飲酒の害は病気だけですか?
A. 連日報道されている通り、飲酒は交通事故や家庭内暴力・殺傷事件にも関連します。実はアルコール依存症の死亡率が高いのは、臓器障害に加え、事故や自殺などで亡くなる例が多いためでもあります。一回の酔っ払い行為で人生を棒に振るという事例には事欠きません「酔っ払って覚えていません」は通用しないのです。
Q.酒はなぜなくならないんですか?
A. 飲酒人口やアルコールに関わる産業が多いこともあり(貴重な税収源)、我が国では残念ながらこのような情報はあまり共有されず、重視されてきませんでした。なんだかタバコ産業の構造に似ていますね。タブー視されてきたこの酒が、じつは日本(世界)が抱える多くの問題を解く一つの鍵なのかもしれません。開いた心で吟味して頂きたいものです(今晩はビールを我慢しよう!かな)。

転載:月刊東洋療法352号
公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会

Dr.タコ  昭和40年生まれ、慶應義塾大学医学部卒。田んぼに囲まれたふるさとで診療する熱き内科医。

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